スキゾイドの生みの親、クレッチマーの類型論

「スキゾイドパーソナリティって正に自分のことじゃん!」という感動から早2年経ちます。こんなにピタッと性格を言い当てられる機会はもう2度とないでしょう。

そんな「スキゾイド」という用語、いつ誕生したのでしょうか?

なんとなく広まったのではありません。明確な提唱者がいます。

ドイツの精神科医エルンスト・クレッチマーです。

クレッチマーの類型論

「エルンスト・クレッチマー」(画像はwikipediaより)

「schizoid(分裂病質)」という言葉が初めて登場するのはエルンスト・クレッチマーの著書『体格と性格』(1921)です。

3つの体格による分類

クレッチマーは人の性格を体格によって、肥満型・細長型・闘士型の3つに分類しました。

・肥満型

肥満型は、循環気質(躁鬱)、温和、社交的な性格です。

デブで陽気なアメリカ人のイメージですね。マツコ・デラックスなんかも当てはまりそうです。

・細身型

細身型は分裂気質、冷静、控えめ、真面目な性格です。

典型的なコンピュータオタクのイメージです。IT企業にうじゃうじゃいます。

・闘士型(筋肉質)

闘士型は粘着質、几帳面、頑固、熱中しやすい性格です。

軍人のイメージでしょうか。「300」という映画のスパルタ軍や、「フルメタル・ジャケット」のハートマン軍曹が浮かびました。

スキゾイドは細身型ですね。しかし回避性パーソナリティと区別が付いていません。

(回避性とスキゾイドの区別はこちら

6つのパーソナリティ分類

クレッチマーはこれら3つの体格に「基本的反応4タイプ」という原始的な反応を加味し、6タイプに分類しました。

1.神経質タイプ(N型)
知性が高く、自分の内外に対する感受性が強く、内省過剰になりやすい。自分の内的反応を気にし過ぎて不安定になりやすい。

2.粘着質タイプ(E型)
几帳面で義理堅い常識人。粘り強いが、ストレスを内側にため込んで忍耐を続けるので、ストレスを爆発させることもある。

3.顕示質タイプ(H型)
我慢より発散を好む外向性を持ち、見栄っ張りで注目の的になっていないと気が済まない。流行に敏感で、社交の華。真の共感性を欠く未熟な性格。

4.偏執質タイプ(p型)
信念と自信の持ち主で、攻撃的でデリカシーを欠く。自分の都合のよい方に考えがちでその上に立って積極的に行動する。リーダーになりうるが、ただの傲慢人間にもなりうる。

5,分裂質タイプ(S型)
非社交的で俗を嫌う貴族的性格。分析力・論理力を持つが、対人関係では冷たい。自分だけの世界を作って没頭し、自分をわかってくれる人は好くが、嫌いになれば全く興味を示さないなど好き嫌いが激しい。

6.循環質タイプ(Z型)
高揚していると活発でユーモアに富み、社交を好むが、状況に左右されるので、思考に一貫性がない。周期的に沈み込む時期がある。

矢幡洋氏のサイトから引用

スキゾイドは言うまでもなく分裂質タイプですね。回避性は神経質タイプなので、細身型でもしっかり分割されました。

この時点でスキゾイドの原型が出来上がっていたことが分かります。

分裂気質なスキゾイド(シゾイド)

クレッチマーは、気質はグラデーションのようなものだと考えていました。

健常者も何かしらの気質を備えていて、それが極端になると精神病になるという理論です。

肥満型は感情の起伏が激しい「躁鬱気質」を持っていて、悪化すると躁鬱病になります。

闘士型は「てんかん気質」、細身型は「分裂気質」を持っています。

細身型は健常者でも分裂気質を持っています。分裂気質とは、自分の内的世界に没頭し、現実の自分と空想世界の自分が解離しやすい状態です。それが少し悪化すると分裂病質、さらに重度になると分裂病(現在の統合失調症)になります。

分裂病まではいかない分裂病質をスキゾイド・パーソナリティ障害と言います。(厳密にはスキゾイドは英語読みなので、ドイツ語読みのシゾイドが正しいです)

こんな感じですね。

分裂気質:スキゾイド・パーソナリティ

分裂病質:スキゾイド・パーソナリティ障害

分裂病:統合失調症

現在からみたクレッチマー類型論

一時は持て囃されたクレッチマー類型論ですが、もちろん昔の話です。

体格で性格を分類するなんて血液型占いと同じレベル。体型による性格分類はでは完全に否定されています。

スキゾイドと分裂病は無関係?

さらに言えば「スキゾイドと分裂病(統合失調症)は関係ない」というのが現在の定説です。

スキゾイドは思考の歪みです。家庭環境や日常生活のストレスから思考回路がねじ曲がってしまったと言えます。

スキゾイドに有効な治療法は認知行動療法です。精神科医と会話しながら正常な認識へと考えを改めれば改善します。

対して統合失調症は脳の異常です。何らかの原因で脳内物質のドーパミンが過剰に分泌されることで妄想や幻覚が見えます。原因ははっきりと分かっていませんが、遺伝子要因と環境要因が複合して起こるそうです。

統合失調症は薬物療法で治します。ドーパミンを調整する薬を飲むことで脳内物質の乱れを調整します。

スキゾイドのように考え方を変えただけでは決して治らない病気です。

(統合失調症はこちらのサイトを参照)

スキゾイドという概念は現在でも評価

体格による分類は否定されましたが、6つのパーソナリティ分類は非常に的を得た分析です。

神経質は回避性パーソナリティ、偏執質は自己愛性パーソナリティ、顕示質は演技性パーソナリティなど、現在のパーソナリティ障害の分類と共通点は多いです。

分裂質の説明もスキゾイドパーソナリティにかなり共通していて、クレッチマーの先見の明が伺えます。

人は分裂気質と循環気質に分かれているという2大原理は、今でも根強く残っています。(てんかんは遺伝子や脳の障害が原因で起こるので「てんかん気質」は否定されています)

まとめ

スキゾイド(シゾイド)はクレッチマーが提唱しました。

クレッチマーは3つの体格により性格を分類し、最終的に6つのパーソナリティに分類しました。スキゾイドは分裂質に当てはまります。

精神病の気質は誰でも持っていて、その気質が弱いと単なる性格だが、強すぎると精神病になるという理論を展開しました。

スキゾイドは分裂病(統合失調症)の前段階で、悪化すると分裂病になります。

こうした理論のほとんどは現在否定されています。しかしパーソナリティ分類は的確で、現在のパーソナリティ障害の分類にも引き継がれています。

いかがでしたか? 1921年からスキゾイドの概念が出来上がっていたのは驚きです。

その後、スキゾイドの理論はイギリスの対象関係論で取り上げられます。フェアバーンやガントリップの本を読む場合、クレッチマーの類型論を知っておくと理解が早いかもしれません。

こちらのサイトでクレッチマーの分類を元にした自己分析ができます。気になったらやってみてください。ちなみに僕はちゃんと(?)分裂気質でした。

あまり本気にせず、ほどほどに参考にしてください。

ここまでお読みくださりありがとうございました。