抑うつとスキゾイド それぞれの防衛手段とは?

スキゾイド

抑うつ気分とは、気分の落ち込みが続いたりやる気が起きない状態です。これが悪化して長引くとうつ病になります。

そんな抑うつとスキゾイドには深い関係があります。

どちらも外部環境からの防衛手段として乳児期の単純な関係を利用しているのです。

 

 

メラニー・クラインは、人は精神的なストレスを抱えた場合、妄想・分裂態勢か、抑うつ態勢どちらかの防衛手段を使う説を唱えました。

スキゾイドは分裂態勢を使った精神防衛手段であり、抑うつは抑うつ態勢を利用した精神防衛手段なのです。

 

良いか悪いかの妄想・分裂態勢

妄想・分裂態勢は幼児期の、特に前期口唇期と呼ばれる期間を利用しています。

前期口唇期とは赤ちゃんが生まれてから3~4ヶ月までの時期です。

 

その時期の赤ちゃんは母親を一人の人間として認識していません。授乳中も母親という存在ではなく、乳房という一つの部品から母乳を貰っていると思っています。

こうした部品としての捉え方を部分対象と呼びます。

 

乳房にも「良い乳房」と「悪い乳房」が存在します。良い乳房とは、しっかり母乳が出て、赤ちゃんの食欲を満たしてくれる存在です。悪い乳房とは、母乳が出ず赤ちゃんの欲求が満たされない乳房です。

 

良い乳房も悪い乳房も同じ母親が持っているのですが、前期口唇期の赤ちゃんはそれぞれ別の存在だと認識しています。

そして良い対象だけを自分の中に取り入れ、悪い対象は外で追い出して徹底的に攻撃します。

「良い対象と悪い対象を分割する」これが分裂態勢の由来です。

 

悪い対象を追い出すと書きましたが、心の中での出来事なので、本当に外には追い出せません。実際は悪い対象を心の奥に封印する処理を行っています。

悪い対象は心の奥にひたすら捨てられ、より悪い存在になっていきます。

そして、追い出した悪い対象が自分に攻撃してくる迫害不安に襲われます。この不安が妄想態勢と言われます。

 

片付けでいらないものをひたすら押入れに投げ込むようなものです。部屋はキレイに見えても、何の解決にもなっていません。

いずれ押入れに詰まった悪いモノが部屋になだれ込んでくるのではないか、という不安に怯えることになります。

どうしたら押入れに悪い物を溜め込んでおけるか、が妄想・分裂態勢の課題です。

 

全体像を見る抑うつ態勢

抑うつ態勢は後期口唇期の考え方を利用します。

後期口唇期は生後5ヶ月~1歳までの時期です。

この頃には、「良い乳房も悪い乳房も同じ母親が持っている」という認識が生まれます。部分対象がまとまって存在しているので全体対象と呼ばれます。

母親の全体像ができると同時に自身の全体像も作られます。

 

乳歯が生え始め、授乳中に噛む(攻撃)ができるようになります。前期口唇期には「吸う(愛する)」だけだった手段に「噛む(攻撃)」が追加されます。

 

良い対象と悪い対象が一つになっているので分割することはできません。母親の悪い乳房を「攻撃」すると、良い乳房にもダメージを与えてしまう。そんな罪悪感を抱えます。罪悪感、自己嫌悪が抑うつ態勢と言われる由縁です。

 

なんだかよく分かりませんよね。部屋の片付けに例えてみましょう。

抑うつ態勢では、散らかった物をしっかり片付けようとします。でも、いる物といらない物が分からず片付けられません。いらない物だと思って捨てたら、実は必要な物だったという経験があり、捨てることへの恐怖心があります。

どうしたらいらない物も含めて上手に片付けができるか、が抑うつ態勢の課題です。

 

抑うつとスキゾイドの違い

人はストレスを抱えた場合に何らかの対処をします。その方法は妄想・分裂態勢を利用するか、抑うつ態勢を利用するかで異なります。

 

スキゾイドは妄想・分裂態勢を利用して、悪いものを分割して迫害します。拗れた人間関係であれば人間関係そのものを迫害、感情表現で傷つけば感情自体も迫害します。最終的には自分自体を心の奥に押し込めてしまうのです。

それは一見キレイに解決したように思えます。実際は臭いものに蓋をしただけで何の解決にもなっていないのです。押し込めたものが外にでないように、常に細心の注意を払う必要があります。

 

抑うつは抑うつ態勢を使い、拗れた人間関係になんとか対処しようとします。憎しみも愛情で包んでなんとか受け止めようとします。

しかし、悪いものが大きすぎるとなかなか受け止めることができません。受け止めきれない対象を攻撃することへの罪悪感、攻撃によって良い対象も失ってしまうのではないかという恐怖心が存在します。

まとめ

スキゾイドは妄想・分裂態勢を使って精神防衛をします。良いものと悪いものを分割して、悪いものを押し込めて心の平穏を保つのです。

 

抑うつは抑うつ態勢を利用して精神防衛します。良いものと悪いものは一つの存在だと認識しており、悪いものを良いもので包み込んで保持しようとします。

 

スキゾイドは表面上平然としていますが、抑うつの人は罪悪感や落ち込みがあるのはこういった理由からです。

しかし事態にしっかり対処しようとする抑うつより、見て見ぬ振りをするスキゾイドの方が深刻なのかもしれません。

 

いかがでしたか? メラニー・クラインの対象関係論を説明してみました。なかなか難しいですね。いずれ、もっと噛み砕いた表現にトライしたいと思います。

ここまでお読みくださりありがとうございました。

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