スキゾイドは治療できる? 臨床例から見た治療法を紹介

スキゾイドは治療できるのでしょうか?

自分の性格が嫌でちょっとだけ改善したい、知人や家族がスキゾイド気質で治したい、と思っている方には気になりますね。

一部の本やサイトでは、スキゾイドは本人が困っていないので治療する必要はないと言われています。本人に治したい意識がないので治療は不可能だと言うのです。

でもそれは間違いです。

スキゾイドの治療は可能です。

なぜなら大半のスキゾイドは、心の奥で人付き合いを望んでいるからです。

「そんな馬鹿な、本当に人間関係なんてまっぴらだよ」なんて意見もよく分かります。僕も、お金さえあれば、誰にも知られずひっそり暮らしたい思っています。

でも、「少しだけ人と関わってみようか」なんて思うときはあるはずです。このサイトを見てくれたということは、無意識では治したいと思っているのかもしれません。

『対象関係論の実践』の中で、著者の祖父江さんはこう述べています。

彼らは「自分を知られたくない」「見透かされたくない」「他者と関わりたくない」と思っているばかりではなく、切実な対象希求への「憧れ」を持っている場合も少なくない。

スキゾイドは「人付き合いへの憧れ」を封印しています。自分でもその欲求に気が付かないほど厳重です。

その封印をちょっとずつ解いていくのがスキゾイドの治療になります。

今回は実際の臨床例(治療例)を紹介しつつ、スキゾイドの治療法について見ていきましょう。スキゾイドの治療とはどんなものかが分かります。

スキゾイドは治せる

スキゾイドの治療はできます。しかし難易度の高い治療であり、治療が打ち切られるケースが多いのも事実です。

また改善はするものの、完治するケースはほぼありません。これは他のパーソナリティ障害でも同じです。元々スキゾイドという気質、性格なのだから仕方ありません。

スキゾイドを治すのは難しい

従来のパーソナリティ障害の治療は、患者の共感を得て、相手の間違った考え方を会話の中で修正していきます。

しかし、スキゾイドにはその手法が通用しません。そこで治療者が戸惑ってしまい、治療が滞ってしまうケースもあります。

スキゾイドは、治療者が共感を得ようとする段階で拒絶反応を起こします。スキゾイドにとっての共感とは、自分の家にズカズカと土足で入られているようなものです。

まして自分の心理状態を指摘されるのは、不法侵入者が勝手に家具の配置に文句を言っているのと同じです。そりゃあ追い出したくもなります。

まずは治療者が不法侵入者でなく友人であると分かってもらう必要があり、しばらくもどかしい関係が続きます。

やっと信頼を得ても、患者は本当に人付き合いを望んでいないのでは? という疑問に直面します。

スキゾイドは究極のツンデレ

余程重度のスキゾイド以外は、心の奥では人間関係を望んでいます。

しかし、上手く防衛できているために、治療者はなかなか気が付きません。患者本人も、意識的には本当に人付き合いは必要ないと思っています。治療者はこうした防衛に騙されて面談を終了してしまいます。

そういった事例によって、「スキゾイドは本当に人間関係を望んでいない」という認識ができてしまったのです。

しかし無意識的には人との交流を望んでいます。

患者の「自分は人間と関わりたくない」という発言には「人を求めても受け入れられないのではないか」という恐怖心が含まれています。この恐怖心を取り除く、根気のいる面談を繰り返すことで、患者は徐々に人恋しさに気づいていくのです。

このようにスキゾイドの治療は面倒くさいです。心の防衛が完璧にできてしまったゆえに、突き崩すのも簡単ではありません。

スキゾイドは究極のツンデレと言えますね。

対象関係論的アプローチが有効

スキゾイドの治療には対象関係論の方法が有効です。

今回紹介する例も対象関係論を中心に活用しています。

対象関係論とは、自分と対象との関係に重点を置く精神分析学の一分野です。

この分野は内的世界の分析に重点を置いています。人とのコミュニケーションを通した心の動きも大事ですが、「その時、心の中では何が起こっているのか」の方が重要です。

治療者と患者に友好的関係が築けても、患者の内面では、嫌われたくないために無理をしているのかもしれません。無関心に見える患者も、心の奥では助けを求めているのかもしれません。

スキゾイドは人とのコミュニケーションを取りたがらず、内的世界を重視しています。内面の動きを大事にする対象関係論的なアプローチとは相性が良いのです。

もし診察を受ける場合は、対象関係論に造詣の深い臨床心理士を当たった方が良さそうです。(最終的には自分の判断でお願いします)

臨床例:対人不安の青年

では、実際に対象関係論的アプローチで行われた、スキゾイドの治療を見ていきましょう。『対象関係論の実践』に載っている臨床例です。

患者は20代半ばの青年、F男です。都会での社会人生活に挫折して、故郷に戻り、父親の自営業を手伝っています。対人不安を抱えていて会社以外での人付き合いはありません。

【1】不安の緩和

F男は著者への不安感や緊張感を表しています。著者はその不安の解釈を話し、緊張感の緩和を行います。

「今も私との関係で、あなたは私からどう見られるのか不安なので、ここで病気の話をすることによって、私をうまが合う関係を作ろうとし、私から拒絶されないようにしているのですね」

F男はこうした対人不安を指摘されると、面談を辞めたがったり、別の治療法に取り組もうとします。

そうした行動の根底には、著者とできるだけ深い仲になりたくないという意識があります。

なぜなら、仲よくなった後に裏切られると、取り返しのつかないダメージを受ける、自分の心を無茶苦茶に荒らされるような不安を感じるからです。

この時点では、自分が攻撃されたくないという強い迫害不安が見られます。

3,4ヶ月で徐々に安心感が現れ、面接は、緊張感の緩和から、会話を通した共感に重点を置くようになりました。

【2】「人と違う」という感覚

半年ほどすると、F男は抑えられていた人恋しさを吐露するようになりした。

同時に、「人を求めても受け入れられないのではないか」という「見捨てられ不安」も現れ、以下のような発言をするようになります。

『人間に育てられたチンパンジーのようなもので、「変わっている」と排除されるのが一番怖い』

『「人間じゃない」と見破られるような感じが一番怖い』

それに対し著者は、「あなた自身、自分の中に人とは違った特別変わった何かがあるように思っているのですね」と発言しました。そして「何が人とは違うのか」について焦点を当てていきます。

F男は、感情を思いのままに表現すると、興奮して抑えの効かない、取り返しのつかないことになりそうな不安を語りました。

つまり自己の感情そのものが「人とは違う」と思っていることを著者は発見します。

F男の感情は破滅的なものではなく、自由に表現してもいいと解釈することが治療の中心になっていきました。

【3】受け入れてもらえる彼女の登場

その後、F男にお見合いの話が上がります。

思い切って相手に自分の弱みをすべて話したところ、好意的に受け入れられ交際が始まります。自分が「人とは違う」ために嫌われると思っていたF男にとって、この出来事は強い安心感につながりました。

交際の中で、徐々にセラピストの機能が著者から彼女に移っていきます。彼女との間では素直な感情表現でき、甘えられるようになりました。

2年後、F男が結婚したところで「彼女との2人で今後の生活を営んでいきたい」として面接は終了します。

結果

面接終了時点で、対人不安は大分解消されたものの、深い部分の情動は出てきていません。しかし、週1回程度の面接は、一定の成果があったと著者は評価しています。

このケースは彼女という不安を受け入れてくれた存在が大きいでしょう。見合いに積極的になれたのは、それ以前の面接のおかげとも言えますね。

スキゾイドの治療では、「他者から見破られるのでは」という侵入不安を緩和させ、「自分は人とは違うので受け入れられない」という感覚を修正する必要があります。

まとめ

スキゾイドは治療できます。しかし従来の手法では難しいです。

治療には対象関係論的アプローチが良いと思います。

臨床例では、侵入不安の緩和、人と違う感覚の修正を行いました。最初は人付き合い自体を嫌うF男も、最終的には、彼女のみですが自分の感情を素直に表現できるようになりました。

今回はスキゾイドの治療をテーマに、実際の治療例を交えて説明してみました。

僕はこの本を通して、「スキゾイドも無意識レベルでは人付き合いを望んでいる」という可能性に気が付きました。

それまで「スキゾイドだから治さなくていいや!」とやや吹っ切れていました。ですが、本当に治さなくて良いのか、本当に人間関係が嫌いなのか、もう一度じっくり考えてみる必要があるかもしれません。

ここまでお読みくださりありがとうございました。