愛着スタイルから学ぶスキゾイドの生きやすさ 安全基地を作る

スキゾイド

スキゾイドという言葉を知っても、なかなか生きやすさにつながる情報はないですね。

今回はスキゾイドに似た「回避型愛着スタイル」という概念から、スキゾイドの生き方について考えてみます。

 

回避型愛着スタイルとはその言葉通り、家族や友人、恋人などとの愛着を回避する性格です。生まれつきではなく、家族関係といった環境要因が大きいと言われています。スキゾイド気質を愛着の視点から捉えた概念といえますね。

そんな回避型が生きやすくなるには、心から信頼できる人間関係、「安全基地」の確保が重要です。

 

目次

 

愛着スタイルとは

心理学としての愛着

愛着スタイルの前に、心理学用語の「愛着」について説明します。

心理学で愛着という概念が定着したのはボウルビィによる「愛着理論」です。彼は愛着についてこう定義しています。

愛着は「特定の対象との情緒的な結びつきを指し、乳幼児が母親との情緒的な相互作用を通して形成される、母親と確固たる絆である」

心理学用語の学習

つまり、愛着とは初めは乳幼児と母親の関係についてのみを語る概念でした。

さらに、エインズワースはストレンジシチュエーション法という実験を行い、母親から離れた乳幼児の反応から4つの愛着タイプを分類しました。

 安定型 母親と離れたときに多少混乱するが、再会したときには積極的に身体的接触を求めるタイプ
 回避型  離れたときにほとんど反応を示さず、再会時にも身体的接触をしようとしないタイプ
 葛藤型  離れたときに強く混乱し、再会時に積極的に身体的接触を求めつつも怒りを表明するタイプ
 無秩序型  上3つの行動がバラバラに表れ、一貫性がないタイプ

乳幼児を分けた4つタイプは、その後、大人にも当てはまることが分かってきました。それを当てはめたのが愛着スタイルです。

 

4つの愛着スタイル

愛着スタイルはエインズワースの分類を参考にしつつ、4つに分けられます。

安定型 両親や友人などと親密な人間関係が構築でき、安定した愛着があるタイプ
不安型 周囲の反応に敏感で、嫌われないよう努力する。過剰に人間関係を維持しようとするタイプ
回避型 対人関係に冷めた態度を取り、親密な関係を構築できないタイプ
恐れ・回避型 不安型と回避型の要素が混じったタイプ

他にも幼少期の両親との愛着の傷を引きずっている未解決型というタイプがあります。これは他の3タイプと併存します。

このうち回避型に属するのが、今回主題となる回避型愛着スタイルです。

 

愛着スタイルは生まれつき?

これらの愛着スタイルは遺伝で決められ、生まれたときから変わらないのでしょうか?

『回避性愛着障害』の岡田氏によると、愛着スタイルは生まれつきの遺伝要因より養育者や学校や会社の対人関係といった環境要因の比重が大きいようです。

厳密には遺伝要因が25%、環境要因が75%で、1歳半までの影響がもっとも大きいと考えられています。

物心ついたときから回避型だった、不安型だったという人も、実は幼少期の環境が原因かもしれません。また、歳を取ってからでも環境次第で愛着スタイルが変わる可能性もあるのです。

 

愛着スタイル診断テスト

あなたがどの愛着スタイルに当てはまるかを知るには、岡田尊司さんの「愛着スタイル診断テスト」が有効です。元は『回避性愛着障害 絆が稀薄な人たち』に載っているものですが、少し面倒なので、僕のサイトでもできるように作成しました。

続きを読む前に自分の愛着スタイルを知っておくと理解が深まります。

愛着スタイル診断テスト
岡田尊司さんの『回避性愛着障害 絆が稀薄な人たち』に載っていた愛着スタイル診断テストをWebでできるように作成しました。(すでに作っている方はいるのですが、選択肢が2つしかなかったので) このサイトだけでも愛着スタイルの傾向は分かりま...

 

スキゾイドと愛着スタイルの関係

あなたの愛着スタイルはどうしたか? ちなみに僕は「回避型」でした。

この愛着スタイル診断をスキゾイドが行うとどうなるのでしょうか。スキゾイドと愛着スタイルの関係について考えてみます。

 

アンケートでは8割以上が回避型

以前、僕のブログやツイッターを経由した人に、愛着スタイル診断をやってもらい、アンケートを取りました。215人の結果はこんな感じです。

 

一番多いのは「回避型」の45.6%、2番めは「恐れ・回避型」の23.3%、3番目は「回避-安定型」の14.4%でした。これら3つのスタイルには回避型が含まれており、合わせると83.3%になります。多いですね。

僕のフォロワーはスキゾイド気質やスキゾイドに興味がある人がほとんどなので、「スキゾイドと回避型の相関は強い」と言えそうです。

また、両親や友人と安定した愛着を築いている「安定型」の人が少なく、幼少期に両親との愛着の傷を引きずっている「未解決型」が32.6%になりました。スキゾイド気質の人は愛着の傷を抱えていることも分かります。

つまり愛着の傷を癒やすという考え方はスキゾイドにも有効かもしれません。

 

回避型愛着スタイルとは

回避型愛着スタイルとは、両親などとの愛着が上手く形成されなかった結果、他人と親密な関係を求めようとしなくなった性格です。

人と関わるのは怖いけど人恋しいという人もいれば、一見社交的であったり、自信家、傲慢、冷酷な人が含まれることもあります。

 

岡田氏は回避型の本質について以下のように述べています。

回避型の本質は、不安が強いとか消極的ということではなく、親密な信頼関係や、それに伴う持続的な責任を避ける点にこそあるということだ。親密な信頼関係とは、持続的な責任と結びついている。回避型の人は、それを面倒に感じてしまうのである。

『回避性愛着障害 絆が稀薄な人たち』

他にも回避型の特徴として、人に甘えられない、自己開示が苦手、責任に縛られるのを嫌うなどが挙げられています。

 

かなりスキゾイドと被る点が多いですね。僕は「これってほぼスキゾイドじゃないの?」と思いながら読んでました。

具体的にスキゾイドとどう違うのでしょうか。

 

スキゾイドは遺伝要因?

実は『回避性愛着障害』の中でもスキゾイド(シゾイド)パーソナリティについて言及されています。

他者と共感的で親密な関係をもとうとしない傾向が、生まれもった遺伝要因に由来する部分が大きいと考えられているのが、シゾイド・パーソナリティである。後で述べる自閉症スペクトラムと重なっているケースも多い。

このタイプは、回避型の愛着スタイルが同居することも多く、その場合には、結婚や子育てに関心がなく、自分の内面や自分だけの世界に楽しみを追求することが多い。ただ、愛着スタイルが安定型の人は、少数の人となら親密な信頼関係を築くことができ、夫婦関係や子どもとの関係も安定している。

『回避性愛着障害 絆が稀薄な人たち』

 

岡田氏の主張としては同じ性格でも、遺伝要因が強いのがスキゾイド、環境要因が強いのが回避型愛着スタイルといったところでしょうか。

確かに昔は、スキゾイドを始めとしたパーソナリティは遺伝要因の強い特性だと思われていました。しかし、80年代から親子関係、学校、会社といった環境要因も大きいだろうという考えが主流になりました。

遺伝要因もあるけど環境要因もある、つまり愛着スタイルとそんなに変わりません。よって僕は、スキゾイドと回避型愛着スタイルは見てる側面が違うだけでほぼ同じものだと思っています。

 

3つの回避型に分けられるスキゾイド気質

先程のアンケートでは回避型が強かったですが、大きく3タイプに分かれていました。

回避型が単独で強い「回避型」、回避型と不安型が同じくらい強い「恐れ・回避型」、回避型の次に安定型が強い「回避-安定型」です。

僕は最近、交流会でスキゾイド気質の人と話す機会が増えたですが、「同じスキゾイドでも微妙に性格が違うなー」とよく思っていました。これらの愛着スタイルから性格のちょっとした違いが分かるかもしれません。

この3タイプの違いを考えてみましょう。

 

回避型

単独で回避型が強い愛着スタイルです。愛着回避傾向が強く、親密な関係になりにくいタイプと説明されています。

一人でいても平気で、人恋しさを感じない。家族や友人と心から信頼できる関係を築けていない。典型的なスキゾイドと言えそうです。実際、アンケートでも45.6%と約半数を占めていました。

この愛着スタイルはスキゾイドパーソナリティの他、強迫性パーソナリティや反社会性パーソナリティの人が持つことも多いようです。

 

恐れ・回避型

これは回避型と不安型が同じくらい強い愛着スタイルです。愛着不安、愛着回避とも強く、傷つくことに敏感で、疑り深くなりやすいタイプです。

人と関わるのは煩わしいしけど、親密な関係も築きたい。嫌われたくないし傷つきたくない。人恋しさを感じるタイプですね。回避性パーソナリティと一致する点は多いです。

回避性パーソナリティ、境界性パーソナリティ、妄想性パーソナリティに多いようです。

 

回避-安定型

回避型が強いものの次いで安定型も強い愛着スタイルです。愛着回避が強いが、ある程度適応力があるタイプです。

一人でいるのも平気だけど、条件次第では親密な関係も築ける性格でしょうか。軽度のスキゾイドといった感じです。

僕が知っている回避-安定型の人は色々なコミュニティに顔を出していて行動力がありました。「大人しくて一人が好きそうなのに意外と行動力あるなー」という人はこのタイプかもしれません。

 

スキゾイドにも色々ある

「スキゾイドの定義に共感できるけどちょっと違うな」と思う人は「恐れ・回避型」や、「回避-安定型」に該当しているかもしれません。特に「恐れ・回避型」は不安型も性格に強く影響します。

他のパーソナリティとの併発も珍しくないので、スキゾイド以外のパーソナリティにも当てはまるか調べても良いですね。「回避型」の人は強迫性パーソナリティや反社会性パーソナリティ、「恐れ・回避型」の人は回避性パーソナリティ、境界性パーソナリティ、妄想性パーソナリティが多いようです。


一つ注意してほしいのは、スキゾイドという気質も重度から軽度まで連続していて、色々な度合いがあるということです。

「回避型が真のスキゾイドだ」とか「恐れ・回避型はスキゾイドじゃない」というのはナンセンスです。

 

大事なのはスキゾイド気質であるという事実を自分の理解につなげることです。

「私はスキゾイドっぽいけど人恋しさはある・・・もしかして恐れ・回避型かも」「僕は一人が好きだけど恋人もいる、安定型が入ってるのかな」と、自分の性格を理解する助けとして活用してください。

 

愛着スタイルを安定させるには

あなたの愛着スタイルが何であれ、安定させると生きやすくなります。

「安定させる」と言うと今の回避型の性格を治すようなイメージですが、変える必要はありません。僕も頑張って彼女を作ろうとしたり、社交的になるため接客のアルバイトなんかやっていましたが、自分の性格に合わないものは楽しくないですし、順応できたとしてもいつか限界がきます。

 

大事なのは自分の今の気質をありのまま受け止めることです。人付き合いに興味がない、一人が好きな自分。その性格の良し悪しは考えず、そういう存在として認識することです。マインドフルネスの発想に近いかもしれません。

そのために必要なのが安全基地の確保です。

 

安全基地とは

安全基地とは親と子供の間に形成される信頼関係、「何かあっても母親の元に戻ってくれば安心だ」という感覚のことです。いつでも迎え入れてくれる安全基地あれば、子供は積極的に外の世界を冒険でき、沢山の経験を積めるのです。

 

これは成人にも当てはまり、「何があっても自分を受け入れてくれる居場所」があることで愛着の安定に繋がります。

いざという時に逃げ込める安全基地が形成されていれば、「もう少し人と関わってみよう」「新しいことに挑戦してみよう」「逃げずにもうひと踏ん張りしてみよう」となるわけです。

 

スキゾイドにも安全基地は必要?

「安全基地となる人間関係は大事ですよ」言うと、スキゾイドの人は「別に一人で生きていけるからいいや」と思うでしょう。僕もわりとそっち側の思考でした。

ですが、最近はツイッターや掲示板、交流会でスキゾイドの人と関わり、「なんだかんだ理解してくれる人がいると安心する」という当たり前の事実を自覚してきました。

あなたが「スキゾイド」を知ってどことなく腑に落ちた、安心した感覚があったなら、それは「この症状は自分だけじゃない、他にも共感してくれる人がいた」という広い意味での安全基地が生まれたからだと思います。

 

スキゾイドは表面的には人付き合いなんて要らないと思っているし、人間関係は煩わしいものと本心から思っています。安全基地がなくても生きていける人は多いでしょう。

なので安全基地が絶対に必要とは言いません。ですが、安全基地はスキゾイドにもあった方がいいし、あるに越したことはないと僕は思っています。

 

スキゾイドの安全基地になるもの

ご存知のとおりスキゾイドは人付き合いが苦手です。特に仲良くなることを目的とした中身のない雑談などは最悪です。なのでむやみに友達を作ったり、コミュニティに入るのはオススメしません。

 

スキゾイドが安全基地としやすいコミュニティは大きく2つあります。

一つは趣味のコミュニティです。絵を描いたり、読書したり、バイク、サイクリング、麻雀、格闘技、瞑想・・・色々ありますね。交流のためにゆるく集まるコミュニティより、趣味に真剣に取り込むところの方が雑談が少なく、スキゾイドにとっては気楽です。

また、家族や学校、職場の人の繋がりがあるところより、完全に切り離されている方が良いでしょう。気兼ねなく参加でき、嫌ならすぐに辞められます。

 

もう一つはスキゾイドが集まるコミュニティです。

安全基地の条件としてお互いに共感できる関係が必要なのですが、スキゾイドはなかなか共感してもらえません。それは共感性がないわけではなく、単に共感するポイントがズレているだけです。

スキゾイド同士であれば「人付き合いに興味ない」「雑談面倒くさい」といった、普段なら絶対に共感されないことでも理解してもらえます。それだけでも安心感はあります。

僕もスキゾイドを知った後に2ch(現5ch)のスキゾイドスレを覗いて、「自分と同じことを思っている人が沢山いる」と感動したのを覚えています。

スキゾイド同士なら心の距離感が似ているのも好条件です。「ここから先は立ち入られたくない」という心の壁をお互いに超えてこないので、安心して交流が継続できます。

 

僕も掲示板や交流会を通してスキゾイドが関われる場所を提供しているので、興味があればお声掛けください。

 

まとめ

愛着スタイルとは、両親や恋人、親友と親しい関係が築ける愛着という概念に対し、どのように対応するかで分類したものです。

うち、回避型愛着スタイルは人との深い関係を避ける特性のことで、僕はスキゾイドとほぼ同じ性格だと思っています。

愛着を安定させるには、素の自分を受け入れてもらえる安全基地があると良いでしょう。スキゾイドの安全基地となるのは、共通の趣味があり、普段の人間関係から離れ、スキゾイド気質が多いコミュニティです。

 

色々紹介してきて、「やっぱり人間関係が大事」というありきたりな結論になりましたが、大事なことは案外シンプルなものかもしれません。

今回紹介した愛着スタイルの内容はほんの一部なので、詳しくは書籍などで調べてみてください。

 

ここまでお読みくださりありがとうございました。

 

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