前回、スキゾイドは感情表現に疲れるという話をしました。
スキゾイドは人間関係のストレスから、「いっぱい」か「からっぽ」しかない単純な関係へ退行しています。
そのため、感情表現すると自分の中身を失った感覚があります。人と関わる度に自分の中身を失うのですから当然疲れます。
そのためスキゾイドは、できるだけ感情を与えないよう様々な手段を取ります。今回は3つの方法を紹介します。
・できるだけ話さない
・仮面を被る
・与えずに見せる
話さない、ぼっちになるスキゾイド
感情を与えるのが苦手? なら話さなきゃ良いじゃない!
そんな単純明快な手段です。
スキゾイドは情動的付き合いをできるだけ避けます。また話す場合も感情表現を抑えようとします。
結果として、ぼっちでの行動が多くなったり、引きこもり気味で、暗い性格だと評されます。
普通の人や、回避性人格のように、本当は他人と交流したい場合は耐えられません。
しかし、スキゾイドは内的世界の充実に重きを置いているので、他人と付き合わなくても全く問題ありません。「できるだけ話さない」はスキゾイドには最善の手段でしょう。
しかし現実問題として、全く話さずに生きるのは困難です。次善策として仮面を作るようになります。
仮面を作る
本当の自分を心の奥に隔離して、表面的な人格で人と交流します。
本当の感情は表現しないので、失うダメージを軽減できます。
これはフェアベーンが役割演技と呼ぶものです。
実に豊かな感情表現をすることも、一見きわめて印象的な社交的交わりをすることも、不可能ではない。けれども、彼はそうすることによって、実際には何一つ与えてもいなければ、何一つ失ってもいないのである。
R・フェアベーン『人格の精神分析学』
全く嬉しくないのに笑顔になったり、悲しくないのに悲しそうなフリをする場面は多々ありますよね。
普通の人も、アルバイトや就活の面接、会社での会議や接待などで、無理やり笑顔になった経験があることでしょう。
でもそれは、場の空気を読んで物事を円滑に進めるためです。嫌われたくない、もっと自分を注目してほしいという欲求が混じることもあります。
スキゾイドの目的は根本的に違い、演技は自分の内的世界を守るために行われます。
自分の本心は全く出さず、身代わりとなる存在で現実と向き合います。
暗殺を恐れる指導者(北朝鮮のあの人とか)が影武者を作るのに似ていますね。指導者が暗殺を恐れるように、スキゾイドは人間関係によって内的世界が失われることを恐れます。
この仮面的性格ですが、意識的にやっていることもあれば、全く無意識に形成されていることもあります。
仮面によって社交的に振る舞えていた人が、スキゾイドであると気が付かず看護師になってしまうケースもあります。最初はよくても、毎日患者や同僚との情緒的交流を続けていると、ある時一気に壊れてしまいます。
仮面の形成は社会で生きる上で必要な技術ですが、内面の自分に影響がないかをしっかり確認する必要があるでしょう。
与えずに見せる
スキゾイドでも自分の感情をできれば誰かに与えたい、他人に自分の思考を評価されたいという欲求があります。
そこでスキゾイドは「与えずに見せる」という行為を取ります。スキゾイドが芸術や学問の分野で有名になる理由はここにあります。
絵に感情を込めて見せれば、直接自分の感情を表現するよりダメージは少なく済みます。また一度描いた絵は簡単に喪失したりしません。
科学の発見や、哲学の新しい発想はずっと残り続けます。学問は自分の感情を表現せずに自分の内的世界を他人に認めてもらえる、格好の表現の場なのです。
芸術などを通した間接的な自己表現は「与える」影響を最小限に抑えられますが、それでも喪失感はつきまといます。
画家はひとつの作品を創り上げると、自分の中から大事なものが失われたような虚無感が生じます。これが積み重なると心の中が「からっぽ」になる、いわゆる「燃え尽きた」状態になります。マンガ家のスランプも似たようなものかもしれません。
喪失感はスキゾイドに付き物なので、スランプに陥っても「いまは充電期間だ」と割り切るのが良さそうです。
現在はインターネットが発達しているので、誰でも自由に情報を発信できます。
絵を描いてもよし、小説を投稿してもよし、僕のようにブログを書いてみるのもありです。
「与えずに見せる」環境としては、現代は非常にスキゾイド向きだと言えます。
まとめ
スキゾイドは感情表現によって内的世界を失わないよう様々な防衛手段を取ります。
1つ目は純粋に人との関わりを避けること。
2つ目は仮面の性格を作り対応すること。
3つ目は芸術や学問によって間接的に感情を表現することです。
できるだけ感情を失わないよう対策していますが、それでも喪失は避けられません。
自分の心のタンクに感情がどれだけ残っているか、しっかり管理する必要がありますね。
ここまでお読みくださりありがとうございました。
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